気まぐれ日記 ＳＴＲＡＹ ＣＡＴ その5、同じ境遇に思う

前回、「わたしのブログは『気まぐれ日記』とうたいながら
本当の日記は別に書いている」と記しました。
”本当の日記”ではどんなことを書いているのか？　
人はそれを知りたがるものです。
そんな人たちの気持ちを汲んで、ある日の日記を恥を忍んで載せてみます。

父親のブログをひそかに見ている独身の娘との距離が
これでまたひとつ遠くなることを知りながら・・・。

文頭に”その⑤”とありますが、これは以前に

「気まぐれ日記STRAY CATその①～④」として

このブログに綴ったシリーズものの最後の部分だったのですが、
躊躇して非公開にしました。老いても多少の恥じらいがあったためです。

では「つづき」を・・・。

筆者の親友・茶太郎　野良時代をほうふつさせる眼光

⑤　おなじ境遇に思う

 男を辞めて６年経った。
痛みを味わって、わかったことがある。
今まで見えなかったものが見えてきた。
チャ（茶太郎）の境遇が胸に沁みる。
チャは、自分に先行すること２年、いまから８年もまえに痛みを味わった。
だからわたしより世間が見えているに違いない。
加えてかれは当方と比べものにならない痛みも味わっている。
去勢された後に、うしろ足２本を複雑骨折する大事故に遭ったのだから・・・。
前の足２本でうしろ足を支えながら歩む姿は痛々しい。
ひたむきに生きる野良の姿に頭が下がる。
　こどもの頃わが家に黒と白の毛がまだらのタマという猫がいた。
われわれと同じく雄だったが幸いなことにタマを取られずに一生を終えた。
　こちらは６５歳とはいえ総合体力検査で５３歳と判定されていたときに
男を終えた。
前立腺がんである。
この道に疎い居酒屋のママは、
「タマがないなら、女湯に入れるわね」とケラケラと笑う。
「前立腺がんは、タマまでとらないよ」
「えーっ、どうして？　じゃ、まだ男じゃない」
　こういう人との会話はじつに疲れる。
かの女は外見上整っていれば立派な男性と思っているのだろうか。
　女性の場合は、体内の卵子が枯渇した時点で、「女は終わった」などという。
実際に「わたし、女は終わってるの、心配いらないわ、来て！」と、
なんどか言われている。
手術前は、ハイ！　と飛び込んだものだが今はちがう。
来てっ！　と招待されても支える杖や手土産がない。
玄関前でＵタウンである。
身近でこの辛さを知るのはチャだけだ。
その後も、招待状は幾度となく届く。
が、相手は「手ぶらでいいのよ」とまでは言わない。
こちらは事実を隠してさりげなく、それとなくお断りしている次第である。
いまの自分にできることは、エスプリやユーモアで
精神的な快感を相手に与えるだけなのだ。
　チャに会いたくなって散歩の帰り路に立ち寄ってみた。
となりの家の前に寝そべっていたかれは、わたしを見つけるなり、
尻尾をピンと立ててニャ～と鳴き、きょうも摺りよって来た。
チャは、尻尾だけではあるが自分よりましだと思った。
後見人のN氏が傍にいたので
「近所の猫が発情して鳴きわめいているときチャはどうしているの？　」
と聞いたところ、
「静かに見守っているだけ」と答えた。
その気持ち、わかるな～。一層かれがいとおしくなって撫でた。
「俺の気持ちがわかるのかな？　いつもより人懐こいよ」と後見人に語ると、
「なーに腹が減ってるときはいつでもこうなのさ」
またも聞いたような答えだった。

平成２５年１月３１日　快晴　１０度　風5m/sec

※お詫び：少し古い（自身のための）日記転載ですので読むに堪えない
内容ですみません。

◇男だけでなく人間もおしまいの時期に近づいてきたようですが、
ブログ以外にもたくさん書き溜めがあるので一冊の本にしようと作業中です。

◆上記STRAY CATシリーズ①～④の掲載は下記のとおりです。

その①　チャとシッポのこと　2014.11.14

その②　シッポに触った    2014.11.14

その③　茶太郎への助言  2014.11.19

　　　　　その④　シッポの代わりが育った 2014.111.22

タグ：茶太郎

コメント 12

素晴らしい日記を読ませていただきありがとうございます。

動物（いや生物）としての一番と思われる機能を失っても、ヒョウヒョウと命ある限り生きてゆく。
チャの生き方って猫だからできるのか、人間属では無理なのか。
by DANKAI_Gen (2015-09-08 08:39) 

私も今前立腺癌と云うもので手術すべきかそのまま生きる所まで生きてゆくかで悩んでいますが７０の年齢で痛い思いする事もないかなと思って断り続けて居ります、人間一度は死の世界へ行くんですからとたかをくぐっているんですよ。
医者曰く五年は大丈夫との事です。
by 馬爺 (2015-09-08 12:23) 

馬爺さん
今おいくつかしれませんが、60代なら手術した方がいいと思います。
わたしは、外科手術だけで13，4回やっていますが、鼻の骨を折ったときの手術や、上顎洞の手術と比べますと、首から下ですから大したことはありませんよ。ホルモン治療だと、ムーン・フェースになる副作用があり、数年で効かなくなってしまいます。骨に転移したら、他の病気と違って麻酔が効かず、断末魔のような苦しみのあとに昇天します。
前立腺癌の手術にはたくさんの選択肢がありますからじっくり検討してからでいいでしょう。ぼくは日本を代表する名医・慈恵医大の頴川晋先生に執刀してもらいました。
by 暁烏　英（あけがらす　ひで） (2015-09-08 15:10) 

わたしもいつか
避妊手術をした猫の気持ちが分かるようになる日がくるのでしょうね。
今から風呂場で猫と語らって参ります。
（お風呂場が好きな猫なんです（笑）)
by リュカ (2015-09-08 18:46) 

昨年は受けられなかったので、今年、前立腺癌検査を受けてみます。
明日は我が身･･･かも。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2015-09-08 19:48) 

日記拝見し、ジーンときました。　まだまだですので、これからも拝見、楽しませてください。
私も危ない方なんで、毎年マーカー検査受けてます。　
by Jetstream (2015-09-08 22:01) 

おはようございます。
今朝は台風の影響でこちらは雨風が強くてこれから東海は１８号まともにやって来るようです、被害無きようお気を付けください。
現在は７０歳ですからね、残り少ない人生を生きれるところまで楽しもうと思っております、入院すると今度は痴呆症などが心配に成ってきますし足腰が弱りますからね。
by 馬爺 (2015-09-09 08:04) 

生意気なようですが
人生最後まで諦めないで下さい　その様に誘ってくださる
方が いる事事態が幸せと思い　
どんなかたちであれ すべての人生は挑戦です.
きっと何かが生まれるでしょう。


by タッチおじさん (2015-09-09 13:39) 

素晴らしく文学的な日記でやすね。
つい引き込まれて読みいってしまいやした。
日記だから、稿を重ねずに書かれたのでやしょうか？
差し支えなければ、また他の日のものも公開されてくださいでやす(◎o◎)b
by ぼんぼちぼちぼち (2015-09-09 21:16) 

ぼんぼちぼちぼち さん
過分なるお言葉、ありがとうございます。自分自身の日記は、少し気を入れて書いています。若き日、ノンフィクションジャンルの同人に籍を置いていたころ、恩師（大宅壮一門下生・東京ノンフィクションクラブの面々）からありきたりの日記ではなく「文芸日誌を書け」と勧められ、以来マス目入りの日誌をつけているんです。短時間で書き上げるので誤字脱字があるかと思います。この日誌は、バカ親父の一人娘への遺言みたいなものです。

by 暁烏　英（あけがらす　ひで） (2015-09-10 12:17) 

タッチおじさん
不良のぼくに、真面目なご助言ありがとうございます。「どんなかたちであれ すべての人生は挑戦です.きっと何かが生まれるでしょう。」とありますが、挑戦しても子供はもう生まれません。

by 暁烏　英（あけがらす　ひで） (2015-09-10 12:23) 

何と味のある文章でしょう。本になっていたら読みたいです。
by 風船かずら (2016-06-07 15:44)