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世にも不思議な生前葬 [長く生きてりゃ・・・]

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  わたしのブログは、ほとんどが実話です。長く生きていますと、良いこと、悪いこと、不思議なこと、いろんなことに出会います。

 きょう公開する話も、まだ関係者が生きておりますので、ちょっと書くのをためらいました。しかし、敬愛する民俗学者・宮本常一先生の※「記憶しているものが、書きとめておくのは、文字を知っている者の責任ともいえる」のことばが頭から離れず、勇気をもって書くことにしました。

  良し悪しは別にしてこれも平成の民俗の一コマとして残したいと思ったからです。内容は、生きている人の葬式です。一部で行われているいわゆる「生前葬」とは違います。

  ご興味のある方は、続きをどうぞ!

                               ◆ ◆ ◆

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  いまから約10年前、友人のSさんから信じられない話がでた。
「死んだはずの友達(以下Bという)から昨日電話があったんです。もうびっくりしちゃって」
「どういうこと?」
「一昨年、Bさんの娘さんから、母が亡くなりましたと訃報が入り、わたしはBさんのお葬式に出ているんです。」
「よくある生前葬かい?」
「ちがいますよ、ほんとのお葬式です。参列者もたくさん来ていました」
「じゃ電話してきた人は幽霊かな?」
「どんなはなしをしたの?」
「他愛ない会話だったけど、いまは事情があって会えないの、と言いました」
 Sさんは普段から真面目。冗談を言う人ではない。なにかおかしい。好奇心に駆られると同時に鳥肌が立った。
 SさんとBさんは、たがいのご亭主が海外駐在時代に家族ぐるみの付き合いがあった友人同士だったとのこと。
「ちょっと聞きたいが、葬儀の会場はどこ?」
「N市の『K典礼』というところでした」
「通夜か告別式の時、棺桶はあった?」
「あったよ」
「そのとき仏さんの顔、見た?」
「お焼香の場所から離れていたので見てはいない」
「・・・・・・?」
 こんな摩訶不思議な話を聞いて、聞き流すわけにはいかない。早速行動に移した。
真実が分かったところで自分にとってはなんの得にもならないことなのだが要するに暇つぶしである。
 

 まず、某市のBさんの家を直接訪ねてみた。玄関でベルを鳴らすも不在だった。外から見る限りではあるが、空き家のようにも見えた。
つぎにBさんの所在地である市役所に出向き、死亡届が出ているかを調べてみる。2年前、確かに亡くなっている。死亡年月日も確認できた。
そこでもういちどSさんに訊ねてみる。
「ホントにBさんの声だったの?」
「嘘じゃないって! そのときわたしと、かのじょしか知らない内容の話をしたもの」 
 なにかがおかしい。合点がいかないわたしはSさんに「B家の家族状況をもう少し詳しく話してほしい」とお願いした。
すると、Bさんのご主人は元大手企業の幹部。家族は長男と長女二人の子持ちで4人暮らしというところまで分かった。
「そのほかに何か知っていることは?」
「はっきりとは知らないけれど、かなりの借金があるらしい。住居を頻繁に変えているの」と言った。
 この最後の一言でハハ~ンとひらめいた。
 一方、葬儀社「K典礼」を調べているうち、中学時代の先輩がここに勤めていることも分かった。これなら調べやすい。 しかし、ここで「まてよ」とブレーキがかかった。

 深く考えてみると、死者の葬送にはふつう、家族、医師(死亡診断書作成)、葬儀社、宗教法人がかかわる。この葬儀が仏式であったか神式であったか訊くのを忘れたが、この場合さして重要ではない。死者に直接触れるのは、家族、医師、葬儀社の三者だからだ。したがってBさんが生きているなら死者不在の通夜や告別式が執り行われたことになる。先輩もこれに関わっているかもしれない。また医師の死亡診断書は偽物ということになる。これは保険金詐欺ではないかと疑い始めた。

 親しい友人に事のいきさつを話したところ、「おまえ、それ以上追及したら消されちゃうかもよ」と恐ろしい言葉が返ってきた。
たしかに自分もそう思った。他人事で自分の命を落とすのはいやだ。不完全燃焼の気もちは残ったがそれ以上追及するのは止めた。
まもなくSさんも転居したため疎遠になったのでその後のことは全くわからない。
ただ、Bさんがまだ生きていて戸籍上は死んでいる事実。この世を生きてゆくには不都合が多いはずだ。病気になった時、あるいは本当に亡くなった時はどのように対応するのだろうか。こっそりどこかに埋めるのだろうか? 戸籍を買って処理するのだろうか? 怖い世の中である。

 「善人は早死にする」という。悪人のエネルギーは強く、ちょっとやそっとでは死なないらしい。物、金、地位など「得」を手にしても人間としての「徳」は得られまい。[サッカー]

※注釈:「記憶しているものが・・・云々」の出典=『忘れられた日本人』「文字をもつ伝承者」の章。


タグ:民俗
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コメント 13

なんだかなぁ〜!! 横 濱男

ビックリ仰天ですね。
by なんだかなぁ〜!! 横 濱男 (2015-11-25 06:56) 

よしころん

Bさんはどうして電話をかけてこられたのでしょうねぇ。
自分はまだこの世に存在していることを誰かに知らせたかったのかしら・・・
妄想がどこまでも膨らんでしまいそうです ^^;

by よしころん (2015-11-25 08:51) 

馬爺

借財の為に死亡届とはね、でもなぜ電話を掛けたんですかね。
謎は謎のままですね。
by 馬爺 (2015-11-25 13:17) 

green_blue_sky

わからない(^_^;)
by green_blue_sky (2015-11-25 13:36) 

旅爺さん

その様な事がまかり通るんでしょうかね?。
by 旅爺さん (2015-11-25 17:43) 

saia

思わずブルルっときてしまいました!
Sさんが話をした電話の主が本当にBさん本人だとしたら、、、まるでサスペンス小説のようですね(@_@)
まさしく世にも不思議な話であり、考えさせられる話でもありました。

by saia (2015-11-25 21:33) 

暁烏 英(あけがらす ひで)

saiaさん
ぼくも死亡届が出ていることを確認したとき、ブルルと鳥肌が立ちました。
by 暁烏 英(あけがらす ひで) (2015-11-25 22:03) 

yoko-minato

死亡診断書が必要ですよね。
医師はそんな危険を冒すことが
あるのでしょうか!

by yoko-minato (2015-11-26 06:56) 

ゆきち

葬儀から火葬まで空の棺のまま誤魔化し通すのは難しいでしょう・・・。ということはだれかが身代わりに?!
サスペンスドラマの見すぎですね。申訳ありません。
by ゆきち (2015-11-27 00:21) 

暁烏 英(あけがらす ひで)

ゆきちさん
わたしの想像を超えた推理です。身代わりの方法も考えられますね。
それとも蝋人形?
by 暁烏 英(あけがらす ひで) (2015-11-27 09:45) 

アールグレイ

文章を読みながら、サスペンスのようで
この後のことがどうなるのか気になったりもしますが
本人じゃないと謎ばかりですね(*_*;
by アールグレイ (2015-11-27 22:10) 

般若坊

消化不良ではなくて消化不能な話ですね・・・ ^^;
by 般若坊 (2015-11-28 20:11) 

DANKAI_Gen

死者が生き返るといえば確かに信じられないような不思議なこと。
事情があって死んだことにすることが可能なのかも不思議ないこと。

by DANKAI_Gen (2015-12-01 16:54) 

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