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北アルプス 立山登山     [人生とは死ぬまでの暇つぶし?]

毎回アサガオずくめですと、興味のない人には飽きが来ると思います。

そんな理由からきょうは、当月初旬に登った北アルプス立山について

映画の解説と自分の山歩きをビジュアル付きで掲載します。

なお、ここに掲げた写真は、今季だけでなく、過去に登った時のものも

載せています。

SS剱岳方面を眺めるライチョウ.jpg
山を見つめるライチョウ

 

 

 平成26年6月25日

  気まぐれ日記北アルプス立山登山
 
 

 SS 立山の稜線.jpg

6月上旬の立山連峰

 山と、山小屋に集う人々の人間模様をテーマにした映画『春を背負って』が、いま全国の映画館で放映されている。なかなか好評のようだ。この映画については撮影の段階から情報を得ていた。昨年の9月16日、「奥大日岳山中で撮影スタッフ一行と出会った」と神戸の友人からメールをもらっていたからだ。

 春を背負って パンフ.jpg 

 大汝山休憩所[2].jpg

撮影の舞台となった大汝山休憩所 

主な出演者2.jpg 

主な出演者 、左から松山ケンイチ、蒼井優、豊川悦司

 映画の舞台は、笹本稜平の原作では奥秩父・甲武信ケ岳近くの山小屋なのだが木村大作監督の意向で北アルプス立山の大汝山休憩所に設定されている。今月初旬に訪れたばかりの山だ。ストーリーも悪くはないが、山の厳しさと美しさをいかんなく映し出している秀作だ。監督は、かつてカメラマンとして映画『八甲田山』に参加し、 2009年かれの初監督作品『剱岳 点の記』など雪山を撮らせたら日本の第一人者と言われている。

 八甲田山[1].jpg木村大作監督.jpg

木村監督は、このときカメラマンとして参加 していた。

木村大作監督初作品[1].jpg 

木村監督初作品 

 かれの作品は、撮影の基本である「目高」に徹している。つまり、自分の目の高さで撮るということで、ヘリコプターやCGを使うのは邪道という考えのもとに撮影する。今回も徹底した現場主義で、かれの信条「本物を撮る」ことにこだわっている。だからこそ、それを観る我々に感動を与えるのであろう。

 趣味の場を「海」と「山」にもつ自分は、身の安全に欠かすことのできない気象の先取り(読み)を常に心がけている。5月下旬の気象配置から、6月6日には梅雨入り前の天候不順に入ると予見して、6月3日から立山に入った。この映画封切りの11日前である。今回は月一回実施しているグループ登山ではなく、個人的な登山だった。予見した通り下山した日の午後に天気は下り坂となり、翌日から梅雨入りとなった。

SS 黒部ダム側から見た立山.jpg

黒部ダム側から見た目指す立山(東斜面)

SS CIMG6961.jpg

室堂側から見た立山 (西斜面)

 自分がここを最初に訪れたのは黒四ダム(関西電力黒部川第四発電所)が完成した年の昭和38年だった。いまから50年前、長野県側の扇沢から黒四ダム間の関電トンネル・トロリーバスが開通する一年前のことだった。当然長野県側から室堂へは行けず富山県側から入り、バスは弥陀ヶ原が終点だった。あれから何回訪れただろうか、行くたびに新たな感動を覚える。

 いまは、室堂平まで、お年寄りでも行ける時代である。この季節、一般観光客のお目当ては、15m近く積もった雪の切通しのなかをバスで通るアルペンルートツアーである。わたしも70歳を一つ越えたので雪見だけを楽しむべきなのだが、長年競技スポーツ畑を歩いてきたためか、雪見観光では充足感がえられず登山の方へ足を向けてしまう。

 SS CIMG6883.jpg

   登山を始めてから半世紀が過ぎた。この間、危険な目に何度か遭っているので念入りな計画と装備を整えての出発だ。

 SS 立山登山準備の一部.jpg

しかし、この慢心が一番危険なこともわかっている。 経験年数よりも今は己の体力の限界を客観的に見定め、無理をしないことが最優先となる。今回も下山途中、目の高さで起きる落雷の轟音と激しい降雹に見舞われ緊張を強いられた。

SS 雲行きが怪しくなる CIMG6954.jpg

快晴もつかの間、あっという間に天候悪化

 かつて海上で自艇のマストに雷が落ちたことがある。一瞬にしてマスト・トップの鋼製風見が水あめのように溶けてデッキに落下した。その恐ろしさは体にしみついている。

SS マストIMG7072.jpg 

先端にあるのが風見 

 森林限界を超えた高山は、どこも雪に覆われ身を隠す場所がない。ゆえに早足で下山を急いだ。だが緩んだ積雪に足を取られてなかなか前に進まない。心臓に疾患(心房細動)をもつ自分の心拍数は限界に近かった。

 
 立山は、わが国で最も早く開かれた山の一つである。そして富士山、白山とともに日本三霊山のひとつとして称えられ神仏混淆の山として古代から多くの信仰を集めてきた。

SS富山県指定文化財立山参道の石塔.jpg

 SS昔の道者衆と参連衆.jpg女人講と立山先達.JPG

昔の登拝者。左から道者衆、参連衆、女人講、立山先達 

 SS 日本最古の山小屋室堂山荘.jpg

日本最古の山小屋 室堂山荘(復元) 

 立山三山とは浄土山(2,831m)、雄山(3,003m)、別山(2,874m)をいい、この山稜には立山連峰最高峰の大汝山(3,015)がある。

 ⑰凍てつく雄山山頂神社の石垣CIMG6917.JPG

凍てつく雄山山頂神社(神社までの標高は3,005m)

 SS ⑳★立山三山最高峰大汝山3015m頂上.jpg 

大汝山(標高3,015m)。山頂は、外れかかった標識板のみ 

 この山頂近くにある休憩所(小屋)が映画『春を背負って』のロケ現場となったところだ。このほか富士の折立(2,999m)・真砂岳(2,860m)など3,000mちかい山々がつづく。稜線の北端には剱岳(2,999m)が聳える。特筆すべきは2年前、日本にはすでにないと言われていた氷河が、山稜東斜面にまだあることが分かったことだ。

 SS⑳山頂より南南東斜面と黒四ダム湖、遠景は後立山.jpg

 
 先月も立山を訪れているが、登ったのは浄土山だけで春スキーを楽しんだ。春スキーといっても、ここにはリフトやロープウェイなどはない。スキー板を背負って自身の足で頂上に向かい、登りきったところで一気に室堂平に向けてすべり降りる。苦あれば楽ありで、滑走する爽快感がたまらない。山肌すべてがゲレンデである。

立山室堂平、春スキーを楽しむ.jpg 

 ひと月後の今回、だいぶ雪も解け積雪は4m~5m程度になった。しかし、太陽が昇ると、この季節独特のシャーベット状の雪になり足を取られて登りづらくなる。これがけっこう体力を消耗する。
 登山道は、前夜の降雹で先人の足跡が消えていた。雪面に突き刺した目印の竹の棒だけが頼りである。

SS CIMG6918.jpg 

一の越までは緩やかな道で右手浄土山の岩で羽を休める雷鳥の姿をしばし眺めるゆとりの登山。

 SS 雷鳥のオスCIMG6952.jpg

見えにくいが岩の上にオスの雷鳥が・・・。 

だが、一の越から雄山頂上までは、30度近い急勾配を(通常60分のコースを)90分かけて登った。雪のない時は、大きな石にしがみつきながら登る

 SS ⑩強風の中一の越を過ぎ雄山のガレ場を登る-2.jpg

雄山頂上まではこんなガレ場がつづく(9月の斜面) 

が、いまは積もった雪が岩を隠しているので、雪面に一歩一歩アイゼンを噛ませながら登ってゆく。

 SS 6月の斜面.jpg

上の写真とほぼ同じ場所 (6月の斜面)

振り返ると眼下に雪原の室堂平(2,450m)、その北西に奥大日岳(2,605m)がどっしりと構えている。頂上に近づくほど、その景観は雄大にして壮観である。

SS⑲西側斜面は雪と霜CIMG6923.jpg

雄山中腹から大日岳を望む

SS⑭眼下の一の越山荘と雲かかる浄土山CIMG6910.jpg 

目の下に一の越山荘。正面は浄土山への尾根 

上の2枚の写真は、秋の景観。 

※6月の登山では、帰路に撮ろうとしたが天候が急変し、

この場面の雪景色を撮れずに終わった。 

 山小屋で出会ったのは、黒部ダムからほぼ同じ道を一緒に歩いた沼津のIさん。降雹と雷鳴のなかを並んで歩いた台湾人の邱さん夫妻。名古屋方面から来たM夫妻とその友人。Iさんは山の写真を撮るのが目的で重い機材を背負っての登山。邱さんは、愛妻に雪を見せるため、出張先の中国・厦門(アモイ)からやってきた。かれとは湯船につかりながら、生い立ちをきき、互いの人生観を語り合う。名古屋方面から来た3人組との雑談の中では、かれらの口から自分の知人3人の名前が出てきてびっくりする。「齢を重ねると世間が狭くなる」とはこのことか?

 

SS 室堂山荘 .jpg 
 山小屋は雪の中.jpg
 
 6月の室堂山荘は雪のなか
 
 登山者は、それぞれの人生のなかで、いろいろなものを背負い、下界では満たされない何かを求めて、山を目指す。山小屋は、損得抜きで、人間と人間が素の状態で付き合えるのが魅力である。[サッカー]

 

 ※6月24日 六本木ヒルズのクリニックに行った。癌再発の有無を調べる定期診断である。帰りに、ここにある東宝シネマで『春を背負って』を観る。山を知らない人もぜひ見ていただきたい暁烏英お薦めの作品である。

[参考]so-net ブロガー『jetstream』さんの6月23日 掲載ブログ「映画『春を背負って』を観てきました」に感想が載っていますのでアクセスしてみてください。

 [掲載写真]文頭の映画に関するポスターや主な俳優等のスチール写真は、映画『春を背負って』のアートギャラリー等から拝借しました。


タグ:登山
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般若坊

若いころ 会社の同僚に誘われて 八ヶ岳縦走をしたことがあります。
尾根に出るまで 重い荷物をしょっての苦しい上りの連続に もう2度と来るか! と思ったことがあります。
尾根に登って四方を見まわした時に、苦労や苦痛が 一気に吹っ飛びました。
”山” ってそんなもんですね。 ^^; 
by 般若坊 (2014-06-27 10:58) 

Chobi.H.YAOITA

室堂には「楽」に一度行きました
まるで日本ではないようなステキな場所ですよね!
立山の斜面を登る人の列が見えて私も登りたかったのを覚えています
母にあの景色を見せたいのですがなかなかチャンスがなくて…
今年はぜひ連れていきたいと思っています(^.^)
by Chobi.H.YAOITA (2014-06-27 22:01) 

yoko-minato

山に惹かれて険しい山登りに挑戦されるのは
素晴らしいことですね。
経験の長さではなく己の体力の限界を知ることと
言われる言葉、重く響きました。
by yoko-minato (2014-06-28 08:38) 

mimimomo

こんにちは^^
雪の有る無しでは随分景観が違いますね。雷鳥はまだ見たことがない(--
ここの山には苦い思い出が・・・
「春を背負って」結構観ている方が多いようですね。
by mimimomo (2014-06-28 11:49) 

ナツパパ

記事を拝見して、わたしも登山した気持ちになれました。
仰るとおり、自分の体力を知ることは大切ですね。
わたしも気をつけなくちゃ。
by ナツパパ (2014-06-30 08:33) 

Jetstream

楽しく拝見させていただきました。 久しぶりにあの山域へいってみようかなと思っています。
「己の体力の限界を客観的に見定め、無理をしないことが最優先となる。」 まったく同感です。
by Jetstream (2014-07-04 09:16) 

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