NO.22 旅の職人 その⑧ 歩く旅で知ったこと [人生とは死ぬまでの暇つぶし?]
前回、旅の楽しさの極みは、自分の足で歩くことと書きました。
だからといって、わたしの旅がすべて歩いているわけではありません。
時には電車や車、飛行機にも乗ります。
でも全国の平均的観光客より足で歩いている方だと思います。
トボトボと歩いていますと目に見えないその土地にしかない文化(風俗、習慣、ことば等)に出会います。
これが旅の風情に付加価値を生み出します。
昨日、文化勲章の授与式がありました。
そのなかに日本映画界の名優、高倉健さんがおりました。
わたしもフアンのひとりですから自分のことのように喜びました。
夜になってかれの記念TV番組が急遽放映されました。
その中に、かれの著書『想』に触れた場面がありました。
撮影の仕事で母親の死に目に会えず、1週間後に母親のお骨と対面したそうです。
そのときかれは、母の骨壺を開け、骨を食べた、と語っています。
この番組をご覧になった方は、「えーっ! あの健さんがー」と驚いた方もいたでしょう。
わたしは、驚きません。かれが九州筑豊炭田の出身だということを知っていたからです。
詳しくは続きを読むに記しますが、これも「歩く旅」で知ったことです。
再三申しますように、観光パンフレットを見ながら(車利用の)オーソドックスな旅では
気づかずに通り過ぎてしまいます。旅の職人は、一歩踏み込んだ旅を続けています。
その⑧ 歩く旅で知ったこと
炭鉱の町、筑豊を歩いているときだった。喪服を着た年寄りに出会う。 「きょうは法事ですか?」と問いかけたところ 「骨がみに行くとです」(ホネガミに行くんです)と応えた。 聞き慣れないことばに、頭の中で漢字に直して意味を探った。自分なりにこれを「骨神」と訳したが聞いたことがないので爺さんの跡を追ってみた。行きついた先は、クジラ幕を張りめぐらした葬儀場であった。この地方では葬式のことを「骨がみ」ということがわかった。骨になって神様になるからか、と思ったら、漢字にすると「骨噛み」だそうだ。なぜか? 焼香が始まる前に時間を持て余している人に訪ねてみた。すると思いもかけない答えが返ってきた。
「死んだ人の骨を食べると元気をもらえるから・・・いまじゃ食わんとですがね」と、こともなげに言う。
その後、この風習の源流を探す旅にでると五島列島にも沖縄にもこの風習があることを知った。沖縄では「骨かじり」という。漢字に直せば「骨齧り」で意味するところは全く同じなのだ。五島では他人の骨を食べるのではなく、病弱な子供に祖父の骨を墓から掘り起して火で炙って食べると、その子が丈夫になるからだそうだ。余談だがこれは奥の細道を踏破して知ったことなのだが、江戸時代、疳の虫にマゴタロー虫(トンボのヤゴのような虫)を煎じてこどもに飲ませていたのに似ている。
高倉健さんは、こどものころ病弱であったと聞く。幼いとき、祖父の骨を食べて丈夫になったのではないかと考えた。健さんは、この風習があった筑豊炭田に育ったから、こよなく愛した母のお骨をごく自然なかたちで口に入れたのではないだろうか。
[追記]東北仙台の近くの山村では、むかし、妊婦が産気づくと、村人がその家に集まり、出産時にでる胎盤を食するという風習があった、とある本で読んだことがあります。これなどは理にかなった行為かもしれません。動物が、出産後の疲労を胎盤を食べることによって回復するのは周知のとおりです。栄養価の高いものだからです。いまでは医薬品にも取り入れられています。自然と人間を含む動物たちとが共存していた時代は、人間も他の動物に学んだのではないでしょうか。
※猫の話にしようかと考えましたが、時節に関連した内容に変更しました。
こんばんは。
ご体調はその後いかがでございますか?
くれぐれもご自愛下さいませ。
画像の?は骨壺ですね。
最近では高級美術品を骨壺に・・・と買い求める方も多いとか。
私は母が希望し私が実行に移したのと同じに散骨が希望です。
骨壺もお墓も不要です。
尤も息子が実行してくれるかどうかは甚だ疑問ですが。
by 青い鳥 (2013-11-04 21:03)
中国の現代小説で読んだことがあります
その地方(たしか重慶)では、出産後、肥立が良くなるように
胎盤をスープで煮込んで飲ませる風習があり
飲ませようとする母と拒否する娘が対立するシーンがあるのですが
娘の体を思っている母の気持ちもわかるし
そんなもの食べたくないという娘の気持ちもわかるし
人間の体をどう扱うかを考えたとき
神聖と穢れは紙一重ではないかと感じることがあります
by チョビ (2013-11-04 21:08)
青い鳥さんへ
ご心配いただきありがとうございます。日増しに不整脈がひどくなっています。が、こころは平常心を保っています。
散骨を日本で最初に始めたのは、わたしの同人(同人誌)仲間です。墓地埋葬法という法律に従ってお骨は処理されるのですが、いろいろと制約があります。散骨は、この法律外(埋めないので該当しない)のため許されるのです。したがって、愛する配偶者のお骨を傍に置きたい人は、ずっと骨壺や、ペンダントに加工したりして持っていても差支えがありません。生前ガーデニングが好きだったからと自分の庭に蒔く人もおります。
by 暁烏 英(あけがらす ひで) (2013-11-04 21:47)
再びお邪魔致します。
散骨を日本で初めて行ったのはお知り合いの方なのですか?
奇遇ですね。
母の希望を聞いた私は、「葬送の自由をすすめる会」に入会させ、
遺言状も書かせ、私を遺言の実行者に指名させて
立会者も交えて法的にも何の支障もなく散骨を執り行いました。
但し、親戚の説得にはかなりの時間を要しました。
母は希望通り私の近くの瀬戸内の海に眠っています。
遺骨の一部は金のペンダントにしました。
by 青い鳥 (2013-11-04 22:01)
チョビさんへ
聖と俗を結ぶ行為は、相手(神や自然、動物)と人間が同化することです。その行為の中で最も直接的なものは、食べることと相手と交わること(性行為)なんだそうです。食べる行為はかなり残酷な面もありますが、これは西洋も同じです。カトリックのミサの「聖体拝受」にみられる司祭がパンを信者の口に入れる行為を見たことがあると思います。英語では、聖体拝受をcommunionといいますがcomは、一緒、または一緒に、の意味で、unionは、結合です。よって、あの儀式はパンに模した神を食べているのです。マタギが熊を仕留める前と食べる前に祈るのも山の神を食べるからなんですね。ちょっと的外れなコメントですが・・・。穢れについては後日記します。
by 暁烏 英(あけがらす ひで) (2013-11-04 22:35)
平常心 立派です。でもクレグレモご自愛下さい。
そう 色々な旅が有りますね。トボトボと放浪の旅も時にはしてみたいです。
若いころ健さんの映画は好きでよく観ました。彼の最近(昨年)の映画は、奥さんの遺言で奥さんの故郷の海に散骨の旅でした。その後、もう一作映画をと言っていたようですが、今回の受賞で もう やらなくなるか? 降旗?監督がどう思っているか?是非やってもらいたい。
散骨希望者が多く出てきましたね・・・。遺族の気持ちも有ります・・
分骨して一部はお墓、散骨 ペンダント 煎じて、粉にして飲む等々・・・。
by 谷津ひろし (2013-11-05 05:00)
まだまだ日本にはいろいろな風習があるようですね。
そう思うと日本も広いですね(笑)。
by ため息の午後 (2013-11-05 21:11)
お久しぶりです。
ご訪問ありがとうございました。
骨を食べる習慣があるとは、知りませんでした。
by ぽちの輔 (2013-11-06 06:28)
マイブログに訪問くださりありがとうございます
骨噛みの風習、始めて知りました
旅の職人さん、いろんな経験をなさっていろんなことをご存知ですね
ブログを楽しみにしています
お身体をご自愛くださいね
by 花好き人 (2013-11-06 15:46)
私も旅行などで訪れた街を歩くことが好きです。
知らない街並み、風習などが一杯ありますね・・・(^。^)
by ken (2013-11-06 21:12)
ご訪問いただき有難うございます
by セイミー (2013-11-08 20:51)
ご訪問ありがとうございました。
by akanenosora (2013-11-08 20:54)
ご訪問&nice!ありがとうございます^^
by 飛狼 (2013-11-09 22:15)
コメントが入っているか確認しないと
ダメですね。
入っていませんでしたので書き直しです。
認証設定は簡単にできるのですが
嫌なコメントで苦労されている時は
簡単にはしない方か・・・ですね。
by yoko-minato (2013-11-10 05:12)