年の瀬に [長く生きてりゃ・・・]
北風の中で [長く生きてりゃ・・・]
何度も歩いている河畔だが珍しく川鵜ではなく
海鵜が50羽ちかく川面に浮かんでいる。
海が荒れている日は、こちらの方が捕食しやすいのかもしれない。
いつもなら我がもの顔で採餌しているアオサギや白鷺も
黒の集団に恐れをなしたのか
芦や枯れ尾花の茂みに隠れているらしく姿が見えない。
3キロほど歩いた時、
前方から黒の柴犬を連れたご婦人がやってきた。
柴犬は他人になつかないはずだが、
声をかけるとニコッと笑ったようなしぐさをして尻尾を振った。
「可愛いですね」
「ありがとうございます」
「何歳ですか?」
「47歳になります」
「いや、奥さんのじゃなくて犬の年齢です」
「あら、はずかしい! この子は12歳です」
「もっと若く見えますね」
「いいえ~、人間でいえば60歳をとうに超えているんじゃないかな、
もう、くたびれ爺さんですよ」
心のなかでは
「じゃあ古希を4年も過ぎた俺はなんなのさ・・・。くっそ~!」
「あなたもくたびれババアになりましたね」
と言い返したいところだが
その頃こちらは草葉の陰よ。
ジジ・ババの遠足 [長く生きてりゃ・・・]
同じおまえも枯れすすき・・・・
『船頭小唄』にもあるように利根の河原には枯れ尾花が良く似合う。
土手の桜も風情があるが今は初冬、すでに葉は落ち,枝のみになった。
今回は(一文字ちがうが)枯れ牡花10人と、
色気が霞みつつある姥桜12人が
千葉と茨城の県境を流れる利根川の河畔を揃って歩いた。
土手から撮った22人のシルエット
いつもなら山頂を目指して歩を進める登山の会なのだが、
187回目の今回目指す先は、
関東三大弁天の一つ布施弁天(県重文)と、
かつて幕府の軍馬の放牧場だった「小金牧※」で
牧士(もくし)を務めた
名主・旧吉田家住宅歴史公園(国指定重文)だ。
過去20年も一緒に歩いている仲間なので、
高校時代の同期生というよりも
大所帯の兄弟姉妹みたいな雰囲気である。
発足当初の話題は、子供の話が多かったが、
ちかごろは孫が大学を卒業した話などに移り歳月を感じる。
「きみんちの娘さんはたしかアメリカ人と結婚したんだよね」
「うん、そうだよ。孫が二人いるの」
「じゃ、お孫さんの目は、左が黒で右がブルーかい?」
「猫ならいるよね、うちは青い目では絶対生まれてこないよ」
「なぜ?」
「だって娘は、黒人と結婚したんだもん」
早稲田の落研※OBのNくんとわたしは、
よく笑い話に花を咲かせる。
先代の圓楽さんの実弟(同落研OB)のジョークは、
じつにおもしろい、お前に似ているぜ、と言った後、
「どう見たって英は大学教授にゃ見えねえな、チャラ男だよ」
互いに知り尽くした仲間なので、
なにを言われても笑って済ませることができる。
ま、こんな他愛のない話を交わしながら歩くので、
19,000歩以上歩いても疲れはしない。
※小金牧(こがねまき)は、江戸幕府が現在の千葉県北西部の下総台地に軍馬育成の ため設置した放牧場である。千葉県には小金、佐倉、峰岡と3つの放牧場があったが、小金牧は一番広く、現在の野田市、柏市、白井市、鎌ヶ谷市、船橋市まで及ぶ。
※落研:落語研究会の略称。オチケンという大学がほとんどだが早稲田ではラクケンという。
◆
初冬の公園 [人生とは死ぬまでの暇つぶし?]
ベンチでくつろぐ老人3人の会話が耳に入ってきた。
「わかんねえ、そんなの必要ねえもの」
「年号が再来年変わるのも知らねえのか?」
「なに~ いまどき年貢が変わる? なんだそれ?」
「ちがうよ、平成時代が終わり新しい年号になるってことよ」
「天皇陛下、死んじゃうのか?」
「疲れるなあ」
「俺だって、日向ぼっこと関係ねえ質問されて、かったりいよ」
ジジイにゃ、学校も~ 仕事もなんにもない~
ゲツ ゲツ ゲゲゲのゲ~