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日の丸を背負った選手 [長く生きてりゃ・・・]

来年は4年に一度の冬季オリンピックの年です。

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韓国・平昌冬季大会シンボルマーク


3年後は、東京オリンピック夏季大会です。

シンボルマーク.png


アスリートたちは、競技に勝つことが使命ですから、

それぞれの目標に向かって猛練習の日々と思います。

わたしたちは、「金メタルをいくつをとるかな」などと

無責任で気楽な会話をしています。

選手にとって声援は嬉しい半面

重荷になることもあります。

きょうは、オリンピックに命を奪われた

日本人アスリートのノン・フィクション ストーリーです。




2017.11.18
長く生きていると東京オリンピックをこの目で2度も見ることができる。
開催日までこの心臓が動いていることを願うばかりだ。


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前回の東京オリンピックでは、
高校時代のクラスメイト宮野洪一(明治大学)が
ボートの日本代表として出場した。
もう一人のクラスメイト牧村暢二(立教大学)も
ボクシングのバンタム級で代表候補に挙がっていたが、
最終選考会で佐原(千葉県香取市)出身の
桜井孝雄(中央大学)に敗けて代表を逃した。(桜井は金メダル獲得)

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このほかオリンピック式典課長の松戸節夫氏も
自分の恩師だったのでじつに身近に感じる大会だった。


この大会で、記憶に残るのは、
大松博文監督率いる女子バレーボール(金)、

大松博文率いる東洋の魔女優勝.jpg


マラソン2連覇のエチオピアのアベベ・ビギラ、

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昨年74歳で亡くなった体操女子個人総合優勝の
旧チェコスロバキア、ベラ・チャスラフスカなどだ。

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だが、なんといってもマラソン円谷幸吉選手の
ラストスパートは忘れがたい。

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2位で国立競技場に入ってから

英国ベイジル・ヒートリーに抜かれたものの

彼は死力を尽くして開催国のフィナーレを飾った。


この大会でメイン会場・国立競技場に日の丸が揚がったのは

後にも先にもこの人の1度だけだった。

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その4年後、メキシコ・オリンピックの直前、
かれは自ら命を絶った。
責任感の人一倍強かったかれは
日本のために再び日の丸を上げてほしいと願う
国民の期待を一身に受けて練習に励んでいたが
その重圧に心身ともに疲弊しての結果であったようだ。
かれの遺書は、涙なくして語れない。(以下、全文を記す)


「父上様母上様 三日とろろ美味しうございました。
干し柿 もちも美味しうございました。
敏雄兄姉上様 おすし美味しうございました。
勝美兄姉上様 ブドウ酒 リンゴ美味しうございました。
巌兄姉上様 しそめし 南ばんづけ美味しうございました。
喜久造兄姉上様 ブドウ液 養命酒美味しうございました。
またいつも洗濯ありがとうございました。
幸造兄姉上様 往復車に便乗さして戴き有難うございました。
モンゴいか美味しうございました。
正男兄姉上様 お気を煩わして大変申し訳ありませんでした。
幸雄君、秀男君、幹雄君、敏子ちゃん,ひで子ちゃん、
良介君、敬久君、みよ子ちゃん、ゆき江ちゃん、光江ちゃん、
彰君、芳幸君、恵子ちゃん、幸栄君、裕ちゃん、キーちゃん、正嗣君
立派な人になってください。
父上様母上様 幸吉は、もうすっかり疲れきってしまって走れません。
何卒 お許しください。
気が休まる事なく御苦労、ご心配をお掛け致し申し訳ありません。
幸吉は父母上様の側で暮らしとうございました」1968.1.9

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

作家・川端康成もこれを読んで
自分の(売文家としての)力量の無さを恥じた※という遺書だ。
現代の若者なら「スポーツは楽しみながらやらなくちゃ・・・」
などというかもしれない。
当時は、敗戦から23年、日本の復興期だ。
国民の「日本人の心意気を世界に示せ!」といった声援を
一手に背負った選手たちだったのである。


白河市出身の円谷家に嫁いだ姉から、
須賀川(幸吉氏の故郷)の円谷家も一党なのよ、
と聞いているだけに他人事とはおもえない。


オリンピックの日本代表選手に対し、
我々は、選手の置かれた立場を理解して
過度の期待を慎まねばならない。


[サッカー]


<参考>

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※:川端康成は、この遺書について、「相手ごと、食べものごとに繰りかへされる〈美味しゆうございました〉といふ、ありきたりの言葉が、じつに純ないのちを生きてゐる。そして、遺書全文の韻律をなしてゐる。美しくて、まことで、かなしいひびきだ」と語り、「千万言も尽くせぬ哀切である」と評した(出典:「一草一花―『伊豆の踊子』の作者」の「十一」、『風景』1968年3月号)。

 当時の関係者からは「ノイローゼによる発作的自殺」「選手生命が終わったにもかかわらず指導者に転向できなかった円谷自身の力不足が原因」など様々な憶測が語られたが、三島由紀夫はこれらの無責任な発言に対し『円谷二尉の自刃』の中で、「円谷選手の死のやうな崇高な死を、ノイローゼなどといふ言葉で片付けたり、敗北と規定したりする、生きてゐる人間の思ひ上がりの醜さは許しがたい。それは傷つきやすい、雄々しい、美しい自尊心による自殺であつた」と強い調子で批判し、最後に、「そして今では、地上の人間が何をほざこうが、円谷選手は、“青空と雲”だけに属してゐるのである」と締めくくっている。


 円谷と接した人は口を揃えて、まじめで責任感が強く礼儀正しい好青年だったと評する。その性格はしばしば自らの不成績を責めるというかたちになって現れ、それを克服するためにオーバーワークを招きがちだったことが、自殺という悲劇につながったとする見方も強い。また沢木耕太郎は自著の中で、1968年の正月に帰郷した際に(上官のために破談に追い込まれた)かつての元婚約者が別の男性と結婚した事実を知ったことも、円谷が自殺に至った直接の引き金になったのではないか、という推論を述べている。(出展:Wikipediaより)


◆◆◆




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コメント 13

green_blue_sky

円谷選手は・・・精神的に追い込まれていましたね。
期待はしたいですが、過度の期待は禁物ですね。
選手が楽しんでけがをせず、競技をしてほしい、そのほうがベスト成績が出そう。
と言って来年も、3年後も過度の期待をする人が多そう。
by green_blue_sky (2017-11-18 16:31) 

ゆきち

今の時代、過度の期待による重圧に加えて、競技そのものと全く関係のない選手のプラベートに付きまとうパパラッチ、特定の選手に対するマスコミの異常なまでの煽り報道など、時に選手生命を奪ってしまうことになりかねないと危惧しております。
外野が大騒ぎせず、競技そのものに集中できる環境が整うことを祈るばかりです。

by ゆきち (2017-11-18 16:53) 

えんや

覚えています、、、痛ましい死でした。
今の選手たち、円谷選手をどう思っているんでしょうか?
この時代「自分が楽しくない」と、、、ってで無かったよね。

by えんや (2017-11-18 17:18) 

ぼんぼちぼちぼち

>オリンピックの日本代表選手に対し、
我々は、選手の置かれた立場を理解して
過度の期待を慎まねばならない。
まったく同感でやす。
by ぼんぼちぼちぼち (2017-11-18 18:29) 

夏炉冬扇

義兄がオリンピックまだ生きるといってます。
by 夏炉冬扇 (2017-11-18 18:38) 

よしころん

涙がこぼれて仕方ありません。
どんなにか自由に心のままに走りたかったことでしょう。
by よしころん (2017-11-18 20:12) 

きよたん

韻を踏んだ美しい詩のような遺書ですね
重圧となる程の期待で追い詰めることは
よくありませんね
メダルの数ではないのですよね


by きよたん (2017-11-18 21:26) 

g_g

東京オリンピックの年は大阪から東京に転勤した年なので
良く覚えています。
その後の円谷選手の自害には驚きました、記事を見て追い込まれていたんですね、今の時代とは違うとはいえ悲しいです・・・
by g_g (2017-11-19 09:32) 

暁烏 英(あけがらす ひで)

夏炉冬扇 さま
次回の東京オリンピックが生きる目標になっている人、結構多いようです。八尾市の名誉市民S氏は現在83歳ですが、「この目で見るまでおれは死ねない」と言ってました。
by 暁烏 英(あけがらす ひで) (2017-11-19 09:50) 

暁烏 英(あけがらす ひで)

よしころんさん
何度読んでも涙が出ますね。かれにし書けない切ない名文です。とくに最後の一行は、ジーンときます。
by 暁烏 英(あけがらす ひで) (2017-11-19 09:55) 

Jetstream

日本のオリンピック選手は軍人同様”お国の為”ということで頑張っていました。特に円谷選手は自衛隊員でそんな気持ちが誰よりも強かったんでしょう。ある意味では日本社会の特異なところでもあり、スポーツに限らず、社会や会社でも同様のことがあり考えさせられます。
期待度も適度に、何でもほどほどが日本の社会にあっているんではないでしょうか。 最近の選手は「応援を力に」と頑張っている選手も多いですが・・・私も重圧は嫌ですね、自由であるのが最大限力を発揮できますね。(笑) オリンピックは楽しくみたいです。
by Jetstream (2017-11-19 11:52) 

JUNKO

円谷選手の遺書はあまりに悲しく胸が締め付けられます。
by JUNKO (2017-11-20 19:16) 

mimimomo

おはようございます^^
 わたくしたち個人が(過度に期待するのはともかく)単純に期待するのは、良いことだと思いますよ。
煽っているのはマスコミでは? 昭和の時代と今とはまた違ってますけれどね。あの頃は日本頑張れ!追いつき追い越せの風潮が強かったですから。
by mimimomo (2017-11-23 06:44) 

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